アウトドア用チェアは、そう言われれば、どういう物であるかは誰でも分かりますが、
「あー、あの折りたたみチェアね」
「キャンピングチェアだろ」
「バーベキューチェアだろ?」「そんな呼び方は、お前ンちだけだ」
‥‥‥と、モメごとになるほど、実は正式名称がありません。
あれほど、ポピュラーで市民権を得ているのに、まったく不思議です。
【全てはコールマンから始まった】
これはたぶん、業界のリーディングカンパニーであるコールマン社が、いちいち名称を変えたからと思われ、コールマン現行商品だけでも、
①コンパクトフォールディングチェア、②リゾートチェア、③スリムキャプテンチェア、④デッキチェア、⑤キックバックチェア、⑥ヒーリングチェア、⑦ファンチェア、⑧コージーチェア、⑨ビーチラウンジチェア、⑩リラックスチェア、⑪イージーリフトチェ‥‥
統一しようや、コールマン!
‥‥‥と、叫びたくなるほど。
それぞれ形状は微妙に違うのです。だから分からないわけでもないのですが、商標登録してあるものもあるらしく、おかげで他社も、
アームチェア、ピクニックチェア、タフタイニーチェア、ラウンジチェア、キャンピングチェア、ディレクターチェア、イージーチェア‥‥
統一しようや。アウトドア業界!
自動車業界だって、パジェロ登場の頃は、ランクルでさえ「パジェロ」とひとくくりに言われて、それでも我慢していました。
現在の総称は『SUV』です。
バブル期までは、『ディレクターズチェア』で総称されていた気もするのですが。
それはそれで、微妙に違う気もする‥‥‥。
【基本はキャンバス布1枚】
共通しているのは、移動用に軽量化されていることで、そのため、座部は、キャンバス布地1枚でできています。
座り心地は、「それなり」で、当然ながら、ウレタンだのクッションを入れた通常のチェアや、車のシートとかには、遠く及びません。
携帯性を重んじた臨時用の椅子ですから、それでもいたしかたないところ。
ところが。このアウトドア用の椅子をそのままシートに用いた車があった、と言ったら、驚かれますか?
【その名もピクニックシート】
フランスの超ロングセラー、シトロエン2CV(ドゥーシーヴォー)がそれ!
日本にもファンが多いので、街中で1度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。
『ルパン三世・カリオストロの城』で、かのクラリス姫が乗っておられたのが、この車です。
この車、なんとピクニック用のキャンバスチェアを、そのままシートとして搭載していたことがありました。
ほら!
2CVは、そのまま「2馬力」の意味。日産GT-Rが550馬力ですから、なんと225分の1?
でも、いくら軽量化しなくっちゃいけないからって‥‥‥布1枚って。
しかも、シトロエンは、バブル期に大流行したBXというモデルまで、“世界最高の乗り心地のシート”を誇っていました。
それが布1枚のシートって‥‥
ところがところが。このシート、現代の小型車なんかより、ずっと乗り心地がよく、すこぶる評判が高いのです!
フランス人!ブラボー!
決め手は、生地を張っている両サイドのスプリング。
が、いかに乗り心地がよかろうと、アウトドアのサイトで取り上げません。
取り上げたには、取り上げたなりの理由があります。
実は、2CVのこのシート、取り外してアウトドア用のチェアとして、そのまま使えるのです!
その名も『ピクニック・シート』!
当時のフランスのリゾートでは、他のアウトドア用チェアを差し置いて、ダントツに際立ったことは言うまでもないでしょう。
この機能は、その後、キャンバス生地でない普通のシートになってからも標準装備されました。
デビューは1948年。
まさしくRV(Recreational Vehicle)の元祖だったわけです。
フランス人!トレビアン!
今回のまとめ
アウトドア用チェアのウンチク
全てはコールマンから始まった
基本はキャンバス布1枚
その名もピクニックシート