登山の遭難事故に学ぶ

登山の遭難事故に学ぶ

空木岳1

出典URL

中央アルプス(木曽山脈)には木曽駒ケ岳や宝剣岳、経ヶ岳、空木岳などの名峰が連なっています。

中でも空木岳(2864m)は日本百名山の1つで、頂上は空木平カールと呼ばれる所があり、森林限界のハイマツ帯の高山植物の宝庫があります。

また風が強いことでも有名です。

この美しい山容を誇る空木岳ですが、遭難事故 も多いことでもよく知られた山です。

2013年7月、中央アルプス檜尾岳(2778m)付近で韓国人パーティー計4人が亡くなる遭難事故が発生しました。外国人による遭難ということで多くのメディアが取り上げ報道していました。

遭難の原因は軽装であったと伝えていますが、実態は高山登山のタブーをいくつか犯した結果であると歴戦の登山家は言っています。

韓国人のパーティーは40歳から70歳代の20人(男14人、女6人)で構成されていました。日本人のガイドは付けていなかった。

ルートは駒ヶ根市の池山林道(1200m)から入山して、空木岳を目指した。空木岳直下にある木曽殿山荘で一泊、翌日、東川岳(2671m)、熊沢岳(2778m)、檜尾岳を縦走し宝剣岳に登り、千畳敷カールからロープウエイで駒ヶ根に戻る予定でした。

標準行動時間は空木岳~宝剣岳間で7時間半というロングトレイルの縦走路となります。

初日は一気に1600mを登らなくてはなりません。翌日はこのルートの最大の呼び物である稜線歩きです。高低差がなく高山の大パノラマを鑑賞しながら歩ける、と思っていたのかもしれません。

しかしこのパーティーはこの山の特徴をほとんど事前調査していなかった。

実はこの縦走路は非常に厳しい登山道です。難所も多く上級者向けのルートです。

なぜ韓国人パーティーはこの山を選んだのか、夏山の登山最盛期で北アルプスなどは混雑するので、少しでも空いているこのコースを選んだのかよく理由が分かりません。

このルートの特徴はアップダウンが一見ないように見えますが、実は近くまで行くと鋸の歯のように鋭い峰がいくつも連なっています。どの山の頂上付近は45°以上の急登がありおまけにガレ場です。鎖場やはしごなどはありません。両手両足でよじ登る技術が必要です。峰と峰の間は100mから200mのアップダウンがあり、これをいくつも越えていかねばなりません。厳しい縦走路の見本のようなルートです。

おまけにこの縦走路には水場がありません。従ってたくさんの重い水をザックに入れて行かねばなりません。

又、ルート上の道案内のための目印のリボンやマーキングが分かりづらい。

天候が悪化すれば道迷いの危険性が高く、時間を浪費する原因となります。

このパーティーは少なくともこうした山のルートの特徴は全く認識がなかったと思えます。

この日はすでに出発時点から天候が悪く、風雨も強く、視界もかなり悪かったようです。山小屋の支配人からも出発は見合わせた方がよい、と注意されていたにも関わらず強行しました。ハードな登り返しの連続と悪天候の中、やがて体力が力尽き、視界不良で不安になり精神的な疲労も重なり、最悪の事態を招いてしまった。

亡くなった人が年配者で薄手のカッパだけで風雨をしのいでいたことから分かるように、この山の登山レベルが必要とする技術と体力が備わっていなかったことと、山の装備があまりにも幼稚であったことが主な原因と思われます。

中高年で装備が甘いと、このような遭難事故に合い易いですよ、という警鐘を鳴らすようなケースです。また高山の場合は行こうとする山の天候だけでなく、ルート上の危険個所や注意すべき個所、エスケープルート、水場などは事前にできるだけ情報を集めておかなければなりません。緻密な登山計画は遭難から身を守る最大の武器です。

亡くなった方のご冥福をお祈りします。

スポンサーリンク